Androidアプリを個人開発者アカウントで出すと、Google Playのストア掲載情報に本名・住所・電話番号が公開される。これは2023年にGoogleがプライバシー方針を変えてからの仕様で、選択の余地はない。
加えて、新規の個人デベロッパーには「20名以上のクローズドテスターで14日間以上のテスト」という条件が課される。知人20人にAPKを配って2週間こもらせるのは、現実的にほぼ不可能だ。
法人アカウントにするとこの両方が消える。販売者欄には法人名と法人住所が出る。テスター要件もない。
法人化のための実費
設立そのものに必要だったのは以下の通り。すべてオンラインで完結した。
| 項目 | サービス | 期間 | 費用 |
|---|---|---|---|
| 電話番号 | povo | 1日 | ほぼ無料 |
| 法人住所 | GMOオフィス(バーチャル) | 2日 | 月額1,280円 |
| 開業届 | 税務署オンライン | 1日 | 0円 |
| DUNSナンバー | 東京商工リサーチ | 7日 | 19,800円 |
| 独自ドメイン + サーバー | Xserver | 1日 | 月額1,280円 |
電話番号と住所を「自宅と紐付かない形」で取れるかどうかが、最初の壁だった。povoのeSIMで番号を一つ確保し、バーチャルオフィスで住所を借りる。これだけで自宅情報は完全に分離できる。
DUNSナンバーは、Apple Developer Programに法人として登録するために必須。東京商工リサーチに依頼すると7営業日ほどで発行される。ここだけ初期費用が約2万円かかるが、これは一度きりの支払い。
月額ランニングコストは5,000円以内
毎月発生するのは、バーチャルオフィス1,280円、Xserver 1,280円、Apple Developer Program(年間$99)、Google Play(買い切り$25)。年割で計算しても月5,000円を超えない。
これに加えて、毎年7万円の法人住民税均等割が必ず発生する。赤字でも払う。「法人を持っている」というだけで毎年7万円。これを許容できるかどうかが、法人化の真の損益分岐点だ。
テスターは要らなかった
実際にローンチしてみると、テスターを集める必要はなかった。代わりにやったのは、信頼できる知人3名にβ版を渡してフィードバックをもらうこと。20人の表面的な意見より、3人の本音のほうがプロダクトに効く。
Google Playのテスター要件が厳しいのは「実質的に動作確認の取れていないアプリの濫造を防ぐため」だが、法人化することでその要件自体を回避できる。プロダクトの質は別途、自分の責任で担保する。
個人と法人、どちらを選ぶか
副業でアプリを1本だけ出して様子を見る、という段階なら個人で十分だ。本名公開と20人テスターを許容できるなら、最短ルートになる。
ただし「複数のアプリを継続的に出す」「書籍やSaaSなど他の事業も同じ屋号でやる」「自宅情報を出したくない」のいずれかに該当するなら、法人化は早めに踏んだ方がいい。後から個人→法人へ移管するのは、ストア審査の観点でかなり面倒になる。
法人化は事業の入れ物を作る作業で、ローンチそのものとは別レイヤーの話だ。一度作ってしまえば、その後すべてのプロダクトがこの入れ物に乗っていく。